あらすじ
「君の『琥珀眼』は欠陥品だ」
第二王子ロイドにそう告げられ、聖女リリアを「心が濁っている」と診断し続けた咎で、治癒師アンバーは王立治療院を追放された。
だが彼女には秘密があった——前世は、心電図と心音図を何万件と読んできた日本の臨床検査技師。だからこそ知っている。「心音は、嘘をつかない」。どれだけ表情を取り繕おうと、鼓動だけは本心を白状するのだと。
喚くことも泣き縋ることもなく、淡々と治療院を去ったアンバー。彼女の琥珀眼が映す「濁った心音」の正体に、まだ誰も気づいていない。
冒険者ギルドで出会った、嘘のないまっすぐな剣士ノエル。そして『無慈悲な紅竜』と恐れられる竜人将軍ガイ。心音を読む力は、見捨てられた治療院ではなく、戦場でこそ輝きを放つ。魔物の鼓動の乱れを読み、弱点を見抜く——彼女は瞬く間に高ランク治癒師として名を上げていく。
そんな中、ギルドに舞い込んだ前代未聞の依頼。それは「心音を持たない隣国の王」を診てほしい、という名指しの願いだった。
生きている人間に、心音がないはずがない。あり得ないものを視るために、この瞳はあるのかもしれない——。
心音は嘘をつかない。淡々クールな転生治癒師が、鼓動の真実だけを頼りに駆け抜ける、痛快お仕事ファンタジー。