あらすじ
静かな部屋が欲しかった。ただ、それだけだったのに。
フリーランス校正者・高梨芽衣(たかなし めい)は、家賃の安さに惹かれて築三十年のワンルームマンションに引っ越す。ところが入居初日の深夜二時三十三分、隣接する空き部屋――303号室から、壁を叩く音が三回。コン、コン、コン。
大家は言う。「あの部屋、もう五年以上、誰も住んでいませんよ」
けれど音は夜ごと続き、芽衣はやがて気づいてしまう。四回目が鳴る前に、決して物音を立ててはいけないという、誰も教えてくれなかった“ルール”の存在に。
数えるな。応えるな。そして――音が完全に止んだときこそ、最も危険な瞬間だということに。