あらすじ
秋田の港町。潮騒と線香の煙が混じり合う本堂で、私は一年のうちに百件近い葬儀を執り行います。曹洞宗の現役住職、蒼龍堅明と申します。
私が読経の静寂の中で目撃するのは、亡き人を送る悲しみの裏側に、ふと鎌首をもたげる人間の剥き出しの業(ごう)。
本作は、『因果物語』や『沙石集』、『宇治拾遺物語』といった日本伝統の摩訶不思議な逸話を、現代の闇――SNS、ルッキズム、飽食、そして孤独――と重ね合わせ、私自身の眼に映る物語として私訳し、再構築したフィクションです。
これは、救いようのない人の性を冷徹に見つめ、現代に潜む「餓鬼」や「蛇」の正体を静かに暴き出す、真夜中の説法です。