あらすじ

バレンタインの日、夫の田辺怜司は「会社で急な会議が入った。遅くなる」と言った。  けれど夜八時半、スマホに入れていたスマートドアベルのアプリから、異常検知の通知が届いた。  画面を開いた瞬間、東京・北区にある古い分譲マンションの玄関で、怜司がひとりの女を壁に押しつけてキスしているのが映った。女は両脚を彼の腰に絡め、ほとんどぶら下がるようにして抱きついていた。 「怜司、ここって奥さんのお母さんが遺した部屋でしょ。もし急に来たらどうするの?」  しばらくして、怜司はようやく女から顔を離した。その声には、隠す気もない侮りが滲んでいた。 「心配いらない。凛は今ごろ店で手いっぱいだ。それに、仮に見られたところで何だっていうんだ。あいつには実家もないし、子どももいない。俺以外に、誰があんな女を相手にする?」  私は画面を拡大した。  女の顔がはっきり見えた。  先週、うちの池袋店に入ったばかりの新人、三浦翠だった。  画面の中で、怜司は当然のような顔をして笑っていた。私はそれを見つめながら、静かに笑った。  この世に男が足りないわけじゃない。  足りないのは、信じるに値する人間だけだ。  田辺怜司との十年の結婚生活は、どうやらここで終わりらしい。

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カクヨム
カクヨム2026/07/03
  • 現在の作品私の数千万円の資産で浮気相手を養っていたヒモ夫。結婚10周年の記念日に、すべての罪を暴いて刑務所へ送り込んでやった話