あらすじ
女子大学の旅行研究会で旅程作成を担当する佐倉真帆は、「旅行は予定通りに進んでこそ成功する」と信じている。集合時刻から昼食候補、雨天代替案、トイレ休憩まで分刻みで管理する彼女は、周囲から「旅程表に住んでいる人」と呼ばれるほどの完璧主義者だった。
そんな真帆が、新入生歓迎旅行の下見を任された相手は、一つ下の後輩・浅見千尋。昨年の合宿では三度も迷子になり、予約した店ではなく偶然見つけた食堂へ入り、集合写真には通りすがりの犬まで写り込ませるような、予定外ばかり起こす少女である。真帆は彼女を「旅程表の敵」と思い、千尋は真帆を「旅程表に住んでいる人」と笑う。
しかし下見では、予定していた店が臨時休業になり、雨天案まで崩れ、迷い込んだ路地で見つけた小さな食堂や古い写真館、商店街の古本屋など、旅程表にない場所が次々と旅を豊かにしていく。真帆は、自分の予定は見ないのに自分の好みは覚えている千尋に少しずつ惹かれていく。一方で、千尋が昔訪れた港町の知人女性に嫉妬してしまい、その感情を「行程管理上の問題」と言い訳してしまう。
気まずくなった二人は一度別行動を取るが、真帆は完璧に予定をこなしても千尋がいない旅がまったく楽しくないことに気づく。やがて本番の新入生歓迎旅行では、電車の遅延、参加者の体調不良、予約人数の食い違い、突然の雨など、下見以上のトラブルが続発する。真帆は「予定を守る」ことではなく、「参加者が楽しめるよう予定を変える」ことを選び、千尋もまた、真帆の綿密な計画があるからこそ安心して予定外へ踏み出せるのだと認める。互いの長所を活かした二人は、周囲から夫婦のようだとからかわれるほど息の合った案内役となる。
だが旅行最終日、遠方インターンへの応募に迷う千尋は、自分の想いが真帆の迷惑になることを恐れ、誰にも告げず海の見える坂へ姿を消す。真帆は初めて旅程表を閉じ、森先輩に参加者を託して千尋を探しに走る。再会した坂の上で真帆は、「予定にないことばかりするから困る。でも、私の予定にあなたが入ってしまったから、もっと困る」と、自分でも気づかなかった恋心を口にする。千尋もまた、以前から真帆を好きだったことを打ち明け、二人はようやく互いの気持ちを確かめ合う。
旅行が終わったあと、真帆の旅程表には初めて「その場で決める」という余白が生まれる。次の旅行計画の最後には、「自由時間:浅見千尋と相談」という一行がそっと書き加えられていた。予定は立てるものだが、恋だけは予定通りには始まらない。完璧な旅程表しか信じられなかった少女が、予定外を受け入れ、自分の未来に誰かを迎え入れるまでを描く百合ラブコメディ。