あらすじ
『熊本県が抱える地域的問題について』。
夏休みの自由研究。
中学生・熊野 琢磨は、地元の事なら簡単に書けるだろうと、そんな軽い気持ちでテーマを決めた。
しかし、そんな浅はかで漠然としたテーマでは、すぐに行き詰まってしまう。
それを見兼ねた幼馴染の佐久間 ベアトリス。
琢磨を導く様にして、彼女は彼を近所の山林へと連れ出す。
こんな森の中に、何があるのか?
ベアトリスが「すぐに分かります」とだけ答えると、《そいつ》は現れた。
──熊だった。
食われる。
直感した琢磨だったが、その時は訪れない。
「彼は合理的です」
ベアトリスはこの熊を『マサオ』と名付けていて、奴の唸りは、なんとなく意味を持って琢磨達の頭へ流れ込む。
【均等に、分ける】
【観光地の、集約】
【巣は、捨てる】
人間ではないマサオの回答は、どこまで行っても『合理的』で、どこか『不気味』だった。
夏休みの宿題をやるだけの話だったのに、この妙な『協力者』と出会った事で、その自由研究は少しずつ普通ではないものへ変わっていく⸻。
あなたの街にも、きっとあるだろう。
見慣れてしまった空き家。
減っていく人の群れ。
寂れた観光地。
維持が難しくなった商店街や公共施設……
社会問題とは、壊れているから起きるのではない。
人が生き続け、変わり続け、何かを残そうとするから生まれる。
合理性だけでは、人間社会は成立しない。
だからこそ人間は、不便で、非効率で、面倒臭い。
それでも……少数ながら人は群れ、町に灯りを残し続ける。
これは熊本県の地方問題を巡る物語。
そして同時に、どこかの地方の話では終わらない物語でもある。
最後には“人間そのもの”へ辿り着く、一夏の物語となる──。