あらすじ
北海道札幌に住む 16 歳の田中花実は、普段は引きこもりがちなオタク女子。オフホワイトのニットにオリーブグリーンのスカート、下にデニムを重ねるのが一番の余所行きの服装で、自分に自信が持てずにいた。冬休み、「少しでも自分を変えたい」と勇気を振り絞り、ピアスを開けてオレンジ色のメッシュを入れるが、地元の誰にも見せる勇気がない。匿名 SNS アカウント「ハナ姫」で褒めてもらおうと、近所の公園のレンガ壁を背景に写真を撮っていたところ、同じ町内会で集団登校も共にした高校 3 年生の先輩・伊奈雄二に偶然見つかってしまう。
活発でサッカー好きな伊奈は、普段は話す機会も少なかった花実の意外な姿に驚きつつも、その心境の変化に興味を持つ。共通の趣味である漫画の話をきっかけに距離が縮まり、派手な描写が好きな伊奈と、設定や伏線を深く考察する花実は互いの視点を知り、会話が弾むようになる。やがて伊奈は、オタク仲間のつながりから「ハナ姫」の正体が花実であることに気づく。彼女の投稿に込められた「誰かに認めてほしい」という承認欲求や不安を丁寧に読み取り、秘密を知った後も変わらず、いやそれ以上に彼女の存在を肯定し続ける。
冬休みが終わる前に花実は髪を元の黒色に染め直すが、ピアスだけはそのまま残す。伊奈の言葉に支えられ、「仮の自分」ではなく「本当の自分」を出せるようになり、匿名アカウントへの依存も自然となくなっていく。新学期を迎え、二人は恋人同士として関係を深め、受験や卒業を経ても変わらぬ絆を築いていく。長い冬が明け春が訪れる頃、花実は自分自身を信じる心を手に入れ、新しい一歩を踏み出していく。