あらすじ
坂口 紡(さかぐち つむぎ)、28歳。
東京の文具メーカーで働く彼女の日常は、山手線の満員電車とデスクワークの往復だけで、静かに擦り切れていく。
現実と折り合いをつけ、「東京の歯車」になることを選んだ私。
理想を捨てきれず、「東京のスピード」に追いつけずに壊れてしまった彼。
3年前の雨の夜、大恋愛の末に別れた元カレ・瀬尾 航(せお わたる)の記憶は、とっくに都会の雑音に消えたはずだった。
——あの日、秋の雨が降る通勤電車の網棚に、
置き忘れられた一冊のボロボロのスケッチブックを見つけるまでは。
そこに緻密な鉛筆の線で描かれていたのは、かつて二人で暮らした狭い六畳間の図面と、紡さえも知らなかった、彼の不器用な「嘘」と「本音」のすべてだった。
「ねえ、航くん。私はこんな風になりたくて、東京に来たんだっけ?」
快速電車を飛び降りた彼女が、雨上がりの街で見つけた、二人だけの速度(スピード)。
誰もが通り過ぎる都会の片隅で起こる、大人のための喪失と再生の純愛ストーリー。
(※読了時間:約15分。少し疲れた夜に、温かいココアを飲みながらお読みください)