あらすじ
「あっ!」
「ん?」
夜、駅前で待ち合わせをし、予約していた居酒屋へ向かって歩き出したところだった。ふいに西谷が声を上げて立ち止まった。
おれも足を止め、西谷の視線の先を追った。だが、特に変わったものは見当たらない。行き交う仕事帰りの会社員や学生、チラシ配りの男、植え込みの花壇に腰を下ろす若い男、道の端でスマホをいじっている女。何の変哲もない駅前の光景が広がっているだけだ。
「あの人……うわあ、マジか。すっげえ……ほわあ……」
ところが西谷は目を見開いて、気持ち悪いほどに感嘆の声を漏らしていた。
「なあ、どうしたんだよ」
おれは眉をひそめたまま訊ねた。
「い、いや……」
西谷はごくりと唾を飲み込み、興奮を抑えきれない様子で口を開いた。
「有名人がいる……!」
「え、有名人?」