あらすじ
前世で舞台衣装を作っていた蓮は、異世界の服飾貴族・ルシアンとして転生した。
彼が授かったのは、衣服に込められた役目を着る者へ与える《役を纏う》という装衣魔法。防寒具なら寒さから守り、薬師の手袋なら棘を防ぎ、兵士の服なら危険を知らせる――そんな“働く人のための服”を作れる力だった。
だが、女性用の衣装も自ら試着し、匿名の仕立屋《シエル》として人々の悩みに寄り添うルシアンを、兄と王太子は「貴族の恥」と断じる。
王太子の婚約披露宴で、命の危険にあった令嬢の礼装を救ったにもかかわらず、ルシアンは女装と身分偽装を理由に王都から追放されてしまう。
送られた先は、織物産業が衰退し、寒さと貧困に苦しむ北東辺境セレスタ。
しかし、そこには糸を紡ぐ人、布を織る人、染める人、服を必要とする人々がいた。
「服は、誰かを決めつけるためにあるんじゃない。誰かが生きやすくなるためにある」
防寒外套、毒気を知らせる作業着、傷ついた元兵士のための上着、子どもが長く着られる制服――ルシアンは《シエル》として、町の人々と新たな工房を立ち上げていく。
だが、工房が成功した時、王太子は兵士の生命力を奪う魔導兵器を完成させるため、セレスタの技術と人々の暮らしを奪おうと動き出す。
追放された仕立屋は、服と魔法、そして自分で選んだ仲間たちの力で王都の不正に立ち向かう。
これは、「男らしさ」「女らしさ」という役割を押しつけられた青年が、誰もが自分らしく生きられる服と場所を作り、王国の歪んだ支配にざまぁを返す異世界装衣ファンタジー。