あらすじ
御堂タツヒトは、竜と呼ばれた古い神格の、人間のかたちをした部分。空を裂くことすらできるのに、自分の願いだけが分からない。だから何も起こさない。国の神格鑑定局に届ければ最高位の管理対象になるはずの存在を、さえない鑑定士・冴島は等級もつけさせず匿い、事務所の片隅で、茶を淹れるだけの"置き物"として住まわせている。
そんな空っぽの御堂を、いつも引っ張り回すのは、鑑定士に憧れる騒がしい女子高生・天原真琴だ。旧校舎に居着いた、「順調です」としか言わせない見栄っ張りの幽霊。閉店間近の百貨店の屋上で、願いを叶えすぎてしまう幼い神様。持ち込まれるのは、しくじりを認められなかったり、優しさが止まらなくなったりした、どこか不器用な神格ばかり。
冴島は、退治しない。深く頭を下げ、名前を与えて、静かに収める。その隣で事件をくぐるうち、何も感じないはずの御堂の中に、ひとつだけ、温度を持つものが芽を出していく──。
願い方を知らない神様と、必要とされたい女子高生の、少し優しい神格事件簿。