あらすじ
桜坂初奈(さくらざか・はつな)は、名門清泉女子学園に通う16歳。名家の令嬢として何不自由なく育ってきた彼女の世界は、最愛の母を喪ったあの日から、すっかり色を失ってしまった。
「貴方に出会えて良かった。この世界が美しく見えるから」
母が遺した最期の言葉の意味を、初奈は理解できないまま日々を過ごしていた。世界はモノクロームで、何を見ても何を聞いても、心には何も届かない。
そんなある日、学園祭で偶然目にしたアイドルのステージ。汗を輝かせながら歌い踊る少女たちの姿に、初奈の心はささやかに震えた。人の心を動かし、笑顔を届ける——それは、母が自分に教えようとしていたことと同じではないか。
「私も、誰かに美しい世界を届けたい。そして、いつか私にとっての『貴方』に出会いたい」
そう決意した初奈は、名家の令嬢である身分を隠し、大手芸能事務所の門を叩く。しかし待っていたのは、恵まれた環境で育ってきた自分と、決して甘くない芸能界との、あまりに大きなギャップだった。