あらすじ
私は別れた。
けれど、彼氏の羽山佑樹が浮気をしたわけでも、ほかの誰かを好きになったわけでもない。
彼はただ、母親に「恋人でもできたの?」と聞かれたとき、嘘をついた。
その軽い「いないよ」の一言で、私は彼の人生における自分の立ち位置を、はっきり理解してしまった。後に彼が私と再会したとき、私はもう別の人生を歩き、彼が二度と追いつけない場所に立っていた。
冬休み前の試験とレポート提出が重なる週。その一週間前の日曜日、夜十時ごろ。場所は、東京にある某私立大学の女子学生会館だった。
私は単身者用の部屋のベッドに寝転がり、優雅ではあるが将来性のまったくない姿勢でスマホを眺めていた。すると突然、画面が小さく震えた。
通知に表示されていた名前は、羽山佑樹。
「佐倉さん。こんな時間にごめん。君は本当に特別な人だと思う。好きです。よかったら、僕と付き合うことを考えてくれませんか」
私は驚き、茫然とし、その場で脳の処理が止まった。