あらすじ
あらすじ
綺麗にされるほど、彼にだけ「可愛い」と言われたい。
その青年に「可愛い」と言われた令嬢は、もう以前の自分には戻れない。
海辺の温泉街アータミル。
最愛の義姉から受け継いだ髪結どころで働く青年ノア・リュミエールは、人を綺麗にすることが好きだった。
麗術――魔法で、その人の可愛いと綺麗を引き出す技術。
けれど、その手は傷を消し、魔素を祓い、命さえ繋ぎ止める。
その身体には、王国が失ったはずの奇跡。
ローエングラムの聖血が流れていた。
ある日、ノアは海辺で第三王女リリアを救う。
氷姫と呼ばれ、世界を無機質なものとして見ていた王女は、ノアの麗術によって初めて自分と世界の美しさを知る。
「私のノアです」
その一言から、ノアの日常は王城へと引き寄せられていく。
彼に出会い甘く微笑むようになった氷姫。
傷を抱えた女騎士。
彼を攫いたい天才魔女。
心を閉ざし、塔に閉じこもった王女。
美しさに飢えた黒薔薇の令嬢。
ノアはただ、目の前の人を綺麗にしたいだけ。
けれど、彼の「可愛い」は令嬢たちの心を乱し、彼の聖血は王国に潜む魔素と陰謀を暴いていく。
海辺の辺境育ちの青年は、知らないうちに王国の中心へ立たされていく。
それでも彼は変わらない。
傷ついた肌を戻す。
乱れた髪を整える。
曇った瞳に光を返す。
そして、心から思ったままに告げる。
「すごく可愛いです」
これは、傷や孤独や作られた美しさの中にいた令嬢たちが世界の色を取り戻し、たった一人の麗術師にだけ「可愛い」と言われたくなる物語。
そして、最愛の人を失った青年が、誰かを綺麗にするたびに、少しずつ自分の居場所を見つけていく物語。