あらすじ
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魔王は討たれ、世界は救われた。
けれど勇者セルヴィンだけが、誰の前にも帰らなかった。
魔王戦の最後、聖女の結界が砕けた瞬間。
勇者は聖女を庇って瘴気を浴び、角と鱗を持つ異形の化け物に成り果てていた。
この姿を仲間に見せられないまま、彼は山奥の洞窟へ消える。
やがて「山の化け物調査」の依頼で山に入った聖女フィーネは、気づいてしまう。
自分を殺せたはずの化け物が、泣く自分の頬にそっと触れたこと。その触れ方を、自分が知っていること。
——結界が破れたから、あの人はこうなった。私が壊したなら、私が治す。
翌日から、聖女の通い妻が始まった。掃除をして、料理を作って、匙で口元へ運んで、治癒の魔法をかけて、「勇者様」と笑いかける。喋れない化け物がどれだけ困惑しても、彼女は止まらない。「明日も来ますね」
言葉を失った元勇者と、押しの強さが服を着たような聖女。返事のない日々を重ねた先で、彼の喉はやがて、彼女の名の最初の一音を取り戻す。絞り出した「……こ、ない、で」への返事は、満面の笑みの「嫌です」だった。
喋れない化け物×押しかけ聖女が紡ぐ、正体隠し×通い妻の再生ファンタジー。