あらすじ
「唯一の温暖化対策」を検索窓に打ち込んだところから、この物語は始まった。
CO₂グラフ、産業革命、人口爆発、森の伐採、痩せていく土、熱を抱え込む海。
主人公は、AIと一緒に「排出を減らせばいい」という単純な話から一歩外に出て、
地球の自己冷却機能が壊れてきた歴史を、文明の履歴書として見直していく。
やがて浮かび上がるのは、三つの補助輪――
深海エアレーション(海)、ミスト冷却(空・都市)、土壌再生(土・流域)。
それは「未来の万能技術」なんかじゃない。
森や土や海がもともと持っていた冷却・保水・炭素固定・循環の力を、
部分的に支え直すための、地味な補修メニューだ。
そして第3部。
テーマは──
**補助輪を、どこまで社会に付けられるのか?**
・海側
──海洋熱や沿岸被害が大きい海域に、深海エアレーションを入れるとしたら、
技術・国境・漁業・国際政治のどんな線を越えなければならないのか。
・空と都市側
──猛暑とヒートアイランドに苦しむ都市に、ミスト冷却や「風の通り道」を、
イベントではなくインフラとして組み込む現実的なラインはどこなのか。
・土と流域側
──一つの流域で始まった土壌再生と共同購入と流域治水の試みを、
他の川と他の町と他の海にどう接続できるのか。
主人公は、ひとつの地域の市民としての視点を持ったまま、
世界の海や都市や川で始まりつつある「補助輪の試み」を見聞きし、
届く場所/届かない場所、届く世代/届かない世代を、
少しだけ痛みを込めて見つめていく。
この物語には、「唯一の温暖化対策」は出てこない。
代わりに、三位一体の補助輪と、それを現実の暮らしや社会の中で
**なんとか動かそうとしている人たち**が出てくる。
全部は救えない。
でも、何もしないよりは、ましな何かを動かしたほうがいい。
その信念だけを手がかりに、
検索窓から公民館まで来た主人公は、今度は海と都市と世界を相手に、
「補助輪をどこまで社会に付けられるのか」を見に行く。