あらすじ

六年間、彼女は誰にも気づかれず、この国を支え続けてきた。 書いた条約も、読み上げられた乾杯の辞も、すべて別人の名前で世に出た。 婚約者として迎えられた誇らしさは、いつしか、代償のない労働に変わっていた。 ある夜、婚約者はこう告げた。 これからは公務に専念してくれればいい、と。 悪意のない、その一言が、六年分の我慢の限界を静かに超えさせた。 数日後、彼女は屋敷から姿を消した。 次に見つかった時、彼女は隣国の外交府で、自分の名前だけを使って働いていた。 皮肉にも、そこはかつて彼女が交渉していた、隣国だった。 彼女が去った国では、静かに、何かが崩れ始めていた。 けれど、当の本人は、振り返る素振りすら見せない。 六年分の沈黙の代償を、誰が、どんな形で払うことになるのか。 そして、自分の名前だけで生きることを選んだ彼女を、待っているものは何なのか。

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小説を読もう2026/07/02
  • 現在の作品もう、誰かの名前で働くのは終わりにします