あらすじ
あらすじ
東京近郊の高校に赴任したばかりの生物教師・里山育生は、白神山地での植物採集中に迷い込んだ石室で、二つの奇妙な存在と出会う。
一つは、楓の盆栽に宿った江戸の国学者・平田半兵衛篤胤。
もう一つは、東国の葛の根を束ねる怪異の長・白神葛葉。
三百年の時を超えて現代に甦った二人を抱えながら、里山は東京郊外の高校で生物を教える日々を送ることになる。
江戸の学者は新幹線を「紅蓮の龍」と見まがい、コンビニのおにぎりに感動し、スマホを「賢い遠耳からくり」と呼ぶ。怪異の長は温室に根を張り、学校の植物たちと密かに言葉を交わす。
そして高校の温室には、ドクダミの少女・蕺(しぶき)、孤独なヤブガラシ、実学の鬼・青木昆陽のイモ爺まで集まりはじめ……。
植物観察同好会の女子高生三人組----桜庭ほのか、楠木ひかり、稲叢みのり----を巻き込みながら、里山たちは今日も怪異と向き合う。
これは、鉢の中の江戸と、草木の記憶、そして現代の高校が交差する、ちょっと賑やかな植物怪異譚。
登場人物紹介
●里山育生(さとやま・いくお)
東京都立茂呂山総合高校の園芸科生物教師。植物と土壌と微生物をこよなく愛する温厚な青年。気づけば怪異たちの世話係になっていた。
●平田半兵衛篤胤(ひらた・はんべえ・あつたね)
江戸後期の国学者。楓の盆栽に宿り、現代に甦る。現代文明に驚き続けているが、いざという時には名刀欅丸を振るう頼もしい存在。生徒たちに「ボンちゃん」と命名され、複雑な心境。
●白神葛葉(しらかみ・くずは)
東国の葛の根を束ねる怪異の長。平安貴族のような風格と口調を持つが、お茶目な一面も。学校の温室に根を張り、里山たちの頼れる相棒となる。
●青木昆陽(あおき・こんよう)
江戸中期の蘭学者・農学者。サツマイモの鉢植姿で登場。データベース並みの植物知識と毒舌を持つ。薬を作るついでに芋焼酎を密造する困った一面も。
●桜庭ほのか・楠木ひかり・稲叢みのり
植物観察同好会(植サー)の女子高生三人組。ほのかは植物の声を感じる感受性の持ち主、ひかりは体育科の元気印、みのりはデータ収集が得意な理論派。怪異事件に巻き込まれながらも、たくましく成長中。