あらすじ
鐘哭(しょうこく)
夏の終わり、大学時代の友人である平、木村、坂本、松原、森村、木下、石井、植田の八人は、肝試しのため山奥の廃れた神社を訪れた。
境内には苔むした巨大な鐘があり、「鳴らした者は呪われる」という噂が残っていた。酔った勢いで彼らは鐘を突き、重く不気味な音を山中へ響かせる。
翌日から異変が始まった。
平は遠くから鐘の音を聞く。誰もいないはずの場所から響くその音は、日を追うごとに近づいてきた。そしてある日、彼は何かに押し潰されたような無残な姿で発見される。
その後も坂本、松原、森村、木下、石井、植田が次々と死亡する。死の直前、全員が「巨大な鐘が迫ってくる」と怯えていた。遺体はいずれも圧死。まるで数十トンもの鐘の下敷きになったかのようだった。
しかし木村だけは無事だった。
仲間たちが恐怖に震える中、彼だけは鐘の音を一度も聞かなかったのである。
原因を調べるうちに木村は神社に伝わる古い記録を発見する。そこには、生贄として鐘の中に封じられた巫女の伝説が記されていた。
巫女は愛する人との未来を奪われた恨みから、「愛を知った男たち」を呪う存在となった。そして鐘の音は、その呪いに選ばれた者だけに聞こえる。
木村が助かった理由もそこにあった。彼だけが女性経験のない、呪いの対象外の男だったのである。
やがて仲間は全員死に絶え、木村だけが生き残る。
彼は呪いを終わらせるため神社へ向かい、鐘の中から見つかった巫女の遺骨を供養する。すると鐘は沈黙し、長く続いた呪いは消えたかに思えた。
だが下山する途中、木村の背後で初めて鐘の音が鳴る。
――ゴォーン。
振り返った彼の表情は恐怖に凍りついていた。
呪いは、本当に終わったのだろうか。