あらすじ
王都リュミエールの外れで、小さな文具店を営む家に生まれたミア・クロウエア。
クロウエア家には、古くから奇妙な戒めがあった。
人前に立つな。
強い感情を込めた言葉を、人に渡すな。
貴族と深く関わるな。
そして、恋文を書くな。
一族の血には、人の心に残りすぎる力があるという。
けれどミア自身は、そんな力をほとんど信じていなかった。
誰にも恋を語れず、誰にも手紙を出せない彼女は、胸に溜まった言葉を宛名のない手紙に書き、小瓶に詰めて夜の運河へ流していた。
誰にも届かないはずの手紙。
海に捨てるだけの、ささやかな本音。
だが、その手紙にはミアの無自覚な魅了の力が宿っていた。
手紙を拾った人々は、まだ見ぬ書き手の言葉を忘れられなくなる。
やがて王都では、彼女は“小瓶の恋文の君”と呼ばれ、貴族も平民もその正体を探し始める。
そして、第二王子、騎士団長、魔術師、詩人貴族までもが、それぞれの理由で名も知らぬ彼女に心を奪われていく。
一方その頃、何も知らないミアは今日も小瓶を流していた。
「誰か素敵な方の元に届いてるといいなぁ」
これは、恋文を書いてはいけない一族の庶民の娘が、たった数通の手紙で王都の貴公子たちを虜にしてしまう、無自覚すれ違いラブコメ。