あらすじ
「変なものを送ってごめん。たぶん、私には『さき』って聞こえる」
市役所の防災無線を録音した姉・相原紗季は、そのメッセージを最後に姿を消した。
操作卓の記録にあるのは、正常に終了した午後六時のチャイムだけ。ところが同時刻、市には「放送のあとに女の声がした」という三件の申告が届いていた。
地方紙記者の水城遼が姉の録音を再生すると、存在しないはずの声が彼の名を呼ぶ。だが同じ音声を聞いた者たちは、それぞれ別の言葉を証言した。
弟には「りょう」。
ある女性には、亡くなった母の声。
姉には、自分自身の名前。
姉を捜す遼がたどり着くのは、三十七年前の避難事故、欠落した八人目の点呼欄、事故後に作り直された祭礼、そして廃止されたはずの拡声子局だった。取材を進めるほど証言は変わり、ばらばらだった声は、ひとつの怪談へ揃い始める。
誰が放送を流したのか。
誰が事故の記録を消したのか。
そして、録音の中で名前を呼んでいるのは誰なのか。
本作は、記事・事故報告書・音声解析・手書きの聞き取り記録などを読み解く、全38話の調査・考察型ホラーです。
さらに、物語に登場する資料を再現した外部サイトを用意しています。本文中の手掛かりを照会語として入力すると、物語の進行に合わせて新たな記録が開く、任意参加型のARG風体験を楽しめます。
外部サイトを見なくても物語は最後まで完結します。資料を調べれば、登場人物とは別の角度から証言の矛盾や伏線を検証できます。
人間が行ったことは、解明できる。
だが、声まで人間が送ったとは限らない。
【資料サイト案内】
鳴代市記録照会端末:https://nonamenonowork.github.io/narushiro-archive/
※本作のために制作したフィクション上のサイトです。現実の場所へ移動したり、第三者へ連絡したりする必要はありません。