あらすじ
大正浅草。傾いた華族家の娘・水無瀬菊乃は、家名と見栄だけを抱えて、浅草の小劇場・駒形座の舞台に立っていた。
気位は高く、金には細かく、失敗すればすぐ扇で隠す。だが、笑われることを恐れていた菊乃は、駒形座の口の悪い台本書き・葉室慎吾と出会い、少しずつ変わっていく。
慎吾は帝大出でありながら、浅草の片隅で赤鉛筆を握る男。人を褒めず、慰めず、優しさをすべて苦情に変えてしまう。けれど彼の台本は、菊乃が逃げずに舞台へ立つための場所を作っていた。
これは、笑われることを恐れた華族令嬢が、笑わせる女になるまでの話。