あらすじ
離職寸前の介護士・真柴由依は、一夜だけで十万円という破格の夜勤を引き受ける。
勤務先は、郊外に建つ鷺宮家の屋敷。依頼内容は、寝たきりの老女・鷺宮千代を一晩見守り、夜間の様子を記録することだけだった。
家族は穏やかで、医師の説明にも不自然な点はない。だが屋敷は静かすぎた。閉ざされた離れ、夜中に響く小さな音、老女が繰り返す「綾子を返して」という言葉。由依は違和感を覚えながらも、記録用紙に同じ四文字を書き続ける。
異常なし。
十夜目、千代は死亡する。警察の机に並べられた十枚の記録には、すべて由依の筆跡で「異常なし」と残されていた。
自分は何を見落としたのか。誰が何を隠したのか。そして、十枚目の記録を書いたのは本当に自分だったのか。
高額夜勤から始まる、記録と記憶の心理サスペンス。