あらすじ

※婚約破棄宣言する側のおはなし※ラブコメ 「婚約を、破棄させていただきます」 ディーアルトは、自分でも驚くほど落ち着いた声でそう言った。人生でもっとも勇気を振り絞った言葉を告げるにしては、及第点と言えるのではないだろうか。 「……はい?」 向かいに座るユーライザは、スコーンを口に運ぼうとしていた手を止め、きょとんとした顔でディーアルトを見た。 窓の外では春の陽光が邸宅の庭を白く照らしており、遠くで鳥がのんきに鳴いている。こんな穏やかな午後に告げる言葉ではないかもしれないが、ディーアルトには今しかなかった。昨夜、前世の夢を見たのだ。 「婚約を、破棄したいと言いました」 「えっと、……もう一度お願いします」 「婚約破棄で——」 「お砂糖、もう一つおつけしましょうか」 「話を聞いてください」 ユーライザはティーポットを持ち上げながら胡乱に見つめ返している。 これは、完全に聞いていない顔だ。 「俺は本気ですよ」 「ええ」 「昨晩、夢を見たのです。前世の記憶の」 「はあ」 「前世で、あなたに酷似した人物に大変苦しめられました」 「それは、大変お気の毒ですが」 「なのでこの婚約は——」 「スコーン、お一つどうぞ」 「食べません」

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小説を読もう2026/07/01
  • 現在の作品前世のトラウマ令嬢に婚約破棄を宣言したはずが、特製はちみつ付きスコーンで餌付けされています