あらすじ

三十年間、自然をコンクリートの「枠」でせき止め、時間を固定することばかりを考えてきた五十四歳の建築家。  決して壊れないものを造り続けてきた男は、いつしか表現の枯渇に苦しみ、九十九里の冷たい秋風の中で立ち尽くしていた。  そんな男の前に現れたのは、美大予備校の「時間を止める死んだ線」に窒息しかけ、波打ち際で砂の城を紡ぐ十七歳の少女。  歳の差三十七歳。交わるはずのなかった二人の孤独が、冷たい濡れた砂の上で静かに重なり合う。  社会的な階層も、大人としての常識や防波堤も、彼女の天衣無縫な感性の前では意味をなさない。  無言で黒い砂を積み上げる時間のなかで、男の閉ざされた内側に、かつてない激しい地殻変動が兆し始める――。  表現という聖域にのみ生きる二人の、静かで危うい魂の共鳴を描く現代ドラマ。

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カクヨム
カクヨム2026/07/01
  • 現在の作品018『波に返す大聖堂・続』