あらすじ

ある朝、水瀬灯は布団から起き上がれなくなった。広告の仕事は嫌いじゃなかった。むしろ好きだったはずなのに、いつからか、言葉を書く理由が分からなくなっていた。 逃げるように帰った港町。祖父の営む「朝倉活版印刷所」では、無口な職人・湊が、鉛の活字を一字ずつ拾い、組み、紙に刷っている。 朝顔の花札、一枚だけの手紙、三十年前に届かなかった名前。持ち込まれる小さな依頼をひとつずつ刷るうちに、灯はゆっくりと、自分の言葉を取り戻していく。 潮の満ち引きのある川。満ちるのを待って港を出る船。そして、満ちるころに帰ってくるもの。 静かな港町と活版印刷所を舞台に、消えていくものと、残るものを描く物語。 ——残すのは、言葉か。それとも、誰かを想った時間だろうか。

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小説を読もう2026/07/01
  • 現在の作品満ちるころ