あらすじ
山水画を得意とする雲水派の画生・沈小嵐(しん しょうらん)には、ひとつだけ致命的な欠点があった。
夢人や幻獣の顔を描くことが、とにかく苦手なのだ。
宮廷儀礼の一つ、顕現式を目前に控えたある夜。小嵐は画室に籠もり、龍の絵を必死に描いていた。しかし何度描いても顔が上手く描けず、半ば泣きながら筆を走らせていたその時――天井からひとりの男が降ってきた。
景淵(けいえん)と名乗るその男は、どこか描きかけの龍によく似ていた。
正体も分からぬまま彼を隠そうとする小嵐だったが、顕現式で事態は一変する。
彼女の描いた絵から現れたのは、愛嬌のある顔をした小さな幻想獣たち。そしてその幻想獣たちは、景淵の姿を見るなり一斉にひれ伏した。
――景淵様。
その名は、宮廷の誰もが知る伝説の天龍の名だった。
風景画は天才的なのに、どうしても顔だけ描けない画生。
誰もが畏れる存在でありながら、その顔を気に入ってしまった古龍。
これは、誰も知らない顔を手に入れた天龍と、不器用な画生が紡ぐ中華恋愛幻想譚。