あらすじ
名門貴族の令嬢セトナ・アストレイは、父の不祥事により没落する。
家名は剥奪され、婚約も破棄され、一夜にしてすべてを奪われた。
行き場をなくした彼女が身を寄せることになったのは、王都の教会。
そこで与えられた役目は、葬送師――死者を送り出す仕事だった。
葬送は敬われる儀式であると同時に、死に関わるがゆえに人々から距離を置かれ、忌避される仕事でもある。
教会での日々の中、セトナは自身が持つ詳細不明のスキル「遺響《いきょう》」の正体を知る。
それは丁寧に弔った故人の後悔、願い、伝えられなかった想いが、彼女のもとへと流れ込んでくる力だった。
遺された想いを遺族へと届けるたび、セトナは葬送の意味と、命を見送るという行為の重さと向き合い始め、やがて故人と遺族をつなぐ役割が芽生え始める。
葬送に関わる人々とのふれあいの中で、彼女は人の温かさを知っていく。
それは、信頼や安らぎだけではなく、これまで抱いたことのない感情――誰かを想う気持ちでもあった。
やがてセトナは気づく。
遺された想いの先には、個人の死に留まらず、この国に静かに広がる歪みと陰謀へと繋がっていることに。
そして、彼女自身もまた、その渦中へと巻き込まれていく。
これは、すべてを失った令嬢が、葬送を通し、遺された想いを受け取り、生者の未来へ繋ごうとする異世界ヒューマンドラマ。