あらすじ
慶長五年九月十五日。濃霧に沈む関ヶ原の盆地
歴史は、徳川内府の謀略通りに動く……はずだった
だが、この最悪の盤面すら、九年前に世を去った「羽柴の影」――誰よりも先が見え、広い視野で豊臣を支え続けた羽柴大納言長秀には、すべて見通していた。
あのお方が遺した言葉をすべて違え、決戦の場へ引きずり出された石田治部少輔三成の血を吐くような悔恨
あのお方から友の『手綱』を託され、崩れゆく肉体を鎧に押し込める大谷刑部少輔吉継の覚悟
そして、死せる大納言の「迷わば、我を見よ」という一筆に縛られ続ける小早川中納言秀秋――
宿命の前夜を経て、戦場を支配したのは「理」ではなく、泥濘と狂気、そして死者たちが仕掛けた布石の連動だった
指揮官を失い制御不能の濁流となる毛利の大軍。藤川台の泥濘から、残る命のすべてを賭して突撃する大谷刑部少輔の白頭巾
「友のために生きるも死ぬも忘れよ。ただ狂え」
激震する床几場。崩壊する三河武士の壁
石田治部少輔が矜持を捨てて泥を舐め、頑なな槍衾を動かしたとき、歴史の歯車は誰も見たことのない狂った速度で回転を始める
謀略の怪物・徳川内府 VS 遺言を背負う執念の文官・石田治部少輔
天下分け目の決戦は、凄絶なる血煙の果てに「大逆転」の結末へ――
――豊臣の世は、未だ潰えず