あらすじ
婚約破棄を言い渡された瞬間、わたしの心に浮かんだのは怒りではなく、来月の刺繍糸の色のことだった。
前世の記憶を思い出したから、わかる。
ここは前世でやりこんだ乙女ゲームの世界。わたしは婚約者に愛想を尽かされて断罪される「悪役令嬢クローディア」らしい。
けれど――おかしい。
本来なら絶望で泣き叫ぶはずのこの場面で、わたしはちっとも悲しくなかった。
「では、お元気で」
静かにそう告げて背を向けた瞬間、会場がざわめいた。
どうやらこの世界、婚約者への「愛情」こそが呪いの発動条件らしい。
つまり――愛していないわたしに、呪いは効かない。
無関心を極めた悪役令嬢の、誰にも予想できない人生が今、始まる。