あらすじ
「魔王様報告は以上になります」
豪華な椅子に鎮座する少年を前に女性は片膝を床につけ深々と頭を下げる。
少年の名前はイヴ。
十六の歳の割には少しばかり幼く見える。
中性的な顔立ちのせいでもあるのだろう。
髪の色は黒く、特に長くもなく短くもない。
角が生えたりだとか、羽が生えたりだとかはなく、見た目は人間そのもの。
洋服も黒い外套で身を包んでいる。パッと見は黒一色だ。
前魔王である父親に魔王の座を譲られてから
丁度一年が過ぎた頃だった。
イヴは女性の話を聞いていないのか、心ここに在らずといった様子で何処か遠くの方を眺めていた。
その目は何も写していないかの如く漆黒に包み込まれている。
数秒の沈黙の後。
「あの⋯⋯魔王様?」
イヴの反応がない事に不思議に思った女性は、下げていた頭を上げる。
ようやく女性の声が耳に届いたのか、ハッと我に返るイヴ。
「えっ!?あ!うん。ごめん。それで、なんだっけ?」
誤魔化すように頬を指で掻き苦笑する。
何も聞いていなかったのだろう。
女性は少し呆れたような表情を作る。
それも仕方のない事だった。
なぜなら、ここ最近のイヴは何をするにも上の空になる事が多いのだ。
だから女性もまたですか?となってしまう。
「魔王様、少しお休みになっては如何ですか?」
精神的な疲れから来てるものだと思い女性はそう促した。
イヴが魔王になってからまだ一年。
女性も心配なのだ。
まだ十代も半ば。一年もこの状況が続けば誰だってつまらなくなるのは当然と言えば当然なのかもしれない。
物心着く頃から始めた戦闘訓練も、今となっては相手もいない。
最初の頃は魔王である父親や部下の者達と訓練していたのだが、最早その必要もなくなってしまい、イヴが魔王の座に着く数年程前から訓練はやらなくなってしまった。
「ううん。大丈夫だよ、続けて」
女性は一度肩を落としてから続ける。
「では、もう一度最初から」
その時だったーーー。
イヴの座っている椅子の下、つまり床に青い魔法陣が現れイヴは、眩い光に包み込まれていく。
「まっ、魔王様!!」