あらすじ
名古屋・栄の老舗高級ホテルにある、
吹き抜けのアトリウムラウンジ。
二時間制。珈琲はおかわり自由。
客は富裕層、宿泊客、商談客、
そしてなぜか事件を連れてくる人々。
そのラウンジに配属されたのは、元・愛知県警
捜査一課の刑事、村雨圭吾。本来ならホテルの
警備部で静かに働くはずだった男が、物腰の
柔らかさだけを理由に、ラウンジマネージャーへ
配置換えされてしまう。
だが、彼にできるのは予約確認と席案内と、
慣れないスポットワークアプリの操作で
精いっぱい。
そこへ、密室、消失、怪異、偽装殺人、
怪盗予告、AI判定、アリバイ工作――
毎回、ラウンジの二時間以内に奇妙な事件が
起きる。
元刑事の村雨は現場を見て、思う。
「密室殺人? 逮捕して自白させれば関係ない」
しかし、ここはホテル。
お客様を取り調べるわけにはいかない。
そこで有能すぎる毒舌サブマネージャーが、
淡々と言う。
「事件が起きましたので、探偵ワーカーを
募集しますか」
こうして、スポットワークアプリに現れるのは、
どこかで見たことがあるようで、絶妙に違う
十人の探偵ワーカーたち。
眠りながら真相を語る男。
「あれれ」と首をかしげる童顔探偵。
祖父のポイントカードにかける高校生風探偵。
虫眼鏡とチョコ菓子のパイプを持つ古典派探偵。
物理実験でラウンジを汚す理系探偵。
なぜかバーから出てこない探偵。
そして、探偵ワーカーとして登録されたAI。
事件は笑える。けれど謎は本格。トリックは
現代的。そして、毎回の小さな出来事が、
やがてラウンジ全体を巻き込む巨大な事件へ
つながっていく。
犯人は誰か。探偵は信用できるのか。
スタッフの中に、事件を呼び込んでいる者が
いるのか。それとも、このラウンジそのものが、
最初から巨大な密室なのか。
読めば珈琲が飲みたくなる。読めばケーキが
怪しく見える。読めば次の探偵ワーカーを
待ちたくなる。
笑って、疑って、もう一杯。
二時間制の森で、今日も事件はおかわりされる。
有賀斗真