あらすじ
「映画化が決定しました」
編集者の一言に、私は思わず立ち上がった。
婚約破棄ものの第一人者として知られる人気恋愛小説家・リリア・アルフォード。二十五歳。
代表作『氷薔薇の公爵令嬢』が、ついに王都劇場で映画化される――はずだった。
だが歓喜は一瞬で消え去る。
監督に決まったのは、興行収入の怪物にして"原作改変王"と恐れられる男、バルト・ギャグウェル。
打ち合わせ初日から「婚約破棄シーンを爆発させましょう!」と笑顔で提案してくる時点で、もう詰んでいる。
「原作にありません」
これが私の新しい口癖になった。
脚本はミュージカル化され、変顔とアドリブが推奨され、王子には謎の滝修行シーンが追加される。
原作に存在しない人物が「面白いから」という理由だけで次々と現れる現場で、私はただ一人、頭痛薬を片手に立ち向かう。
そんな地獄のような打ち合わせに、思わぬ味方が現れた。
王都劇場の総責任者であり第二王子でもあるレオン・アークライト殿下。
冷静で無表情、超有能と評判の彼だが、その正体は誰よりも原作を読み込んだ隠れオタク。
連載初期から読んでいて、私自身が書籍化の際に削除した没シーンまで記憶している筋金入りのファンだった。
「私もそう思います」
監督の暴走に対し、私の反対に殿下が静かにそう告げるたび、私はようやく息を吐ける。
仕事として始まったはずの共闘は、徹夜の対策会議や、ロケ地巡りという名の実質デートを経て、いつしか少しずつ距離を縮めていく。
原作を守るための戦いは、果たして恋にも発展するのか。
王国一のコメディ馬鹿と化した映画製作現場で、頭痛薬と冷徹プロデューサー殿下を武器に、今日も小説家は戦う。
笑って泣ける、婚約破棄×映画製作×大人の恋愛のドタバタラブコメ、ここに開幕。
注意:この小説はフィクションです。実在の人物団体は一切関係がありません。