あらすじ
「お前の魔法は地味すぎる。宮廷の恥だ、出ていけ」
宮廷補助術師のシノは、攻撃魔法も派手な治癒も使えない「地味な魔法」の使い手。けれど彼女が毎朝こなしていた防腐・浄水・結界維持・疲労軽減の付与は、実は王宮全体を静かに支える、誰も気づかない命綱だった。
前世で十五年、総務畑のサンドバッグとして働き続けた社畜の精神は、理不尽な追放くらいでは揺らがない。喚かず、泣かず、縋らず——シノは淡々と王都を去る。その手には、引き出しから落ちた一行だけの古い手紙。
『あなたの地味な仕事は、いつか誰かの命を救う。だから、どうか折れないで』
たどり着いたのは、辺境の街シャダムのボロボロの冒険者ギルド。「報酬はいりません」と言い放ち、彼女は食料庫の防腐、井戸の浄水、結界の張り直しを始める。家政婦だと笑われても構わない。評価されなくてもいい。でも、救える命は救う。
ひと月後、ギルドは——いや、街そのものが、静かに変わり始めていた。食中毒ゼロ、疲労激減、魔物被害は月単位で減少。そして彼女の真価に、ある竜人の将軍が気づいたとき……。
一方その頃、シノを追放した王都は——?
誰にも見られない裏方の仕事が、本当の意味で報われる物語。地味で誠実な彼女の成り上がりと、ほんのり甘い辺境スローライフをお届けします。