あらすじ
「君に魔力はない。召喚は失敗だった。──その毛布を置いて、出ていけ」
現代日本で祖母のクリーニング店を畳もうとしていた私・ユイは、洗いざらしの古い毛布を抱えたまま、突然異世界へと召喚された。けれど鑑定の結果は『魔力量0』。役立たずと嘲笑され、王子に「みすぼらしいボロ布など捨てていけ」と毛布まで奪われそうになる。
それでも、祖母が遺したこの一枚だけは渡せない。私は静かに微笑み、毛布を抱いて凍てつく王宮を後にした。
「魔力ゼロ。なるほど、計測器の上では。……でも、私の手は、まだ何も諦めていませんので」
ところが――肩に抱いた毛布が、ほのかに、温かく、淡く光ったのだ。魔力0のはずの私に、どうして?
雪の街道で凍えていた私を救ったのは、『氷血の将』と恐れられる隻眼の竜人将軍ヴェルク。無愛想で言葉少ななのに、その手は不思議と温かくて――。
捨てられた転移者と、心に氷を抱えた最強の将軍。祖母の毛布に秘められた力が、冷えた国と凍った心を、少しずつ溶かしていく。
「捨てるのは簡単。温め直すのは、心がいる」
心がじんわりあたたまる、追放×溺愛ファンタジー、開幕。