あらすじ
「逃げた」――たった一度そう”語られた”だけで、英雄候補だった俺は、〈敗走のクロウ〉と嗤われる男に落ちた。
異名が、文字どおり力になる世界。皆に信じ込まれた物語は、本物の力に変わる。〈不敗〉と謳われた剣士は決して負けず、〈公正〉と呼ばれた領主には誰も逆らえない。強さとは、剣の腕ではなく「どう語られるか」で決まるのだ。
だが俺には、ひとつだけ奇妙な力があった。人を縛る”語りの糸”が視え――そして唯一、それを”ほどいて”、書き換えられる。
剣も魔法もいらない。噂を書き換え、語られ方を奪い取って、見下してきた連中を、その”絶対の異名”ごと、引きずり下ろす。
奪われた伝説を、取り戻すために。
そして――その嘘を最初に”編んだ”のは、いったい、誰なのか?