あらすじ
借金を抱え、人生の行き場を失った二十六歳の凪原透は、巨額の優勝賞金が懸かった女子オープンマラソンに目をつける。透はウィッグやメイク、体形補整具を用いて「水瀬紗季」という架空の女性ランナーを作り上げ、正体を偽って大会へ出場する。
走力には自信があった。三百万円を手に入れれば、借金を返し、過去を捨てて生き直せる――そのはずだった。
しかしレースの中で、透は男装を好む実力派ランナー・永瀬樹と競り合うことになる。樹は、透の走りや言葉の端々に違和感を抱き、次第に「水瀬紗季」の正体へ近づいていく。
海から吹きつける強風、限界へ近づく脚、崩れ始める偽りの姿。勝利と賞金を求めて走り続ける透は、やがて自分が本当に逃げていたものと向き合わされる。