あらすじ

五十七歳の整備工・山岸修司は、リストラの日、相棒のバイクごと異世界へ迷い込んだ。

そこは、石油のない世界だった。
タンクに残る燃料は、数百キロ分。
使い切れば、相棒は二度と動かない。

帰る道を探して走り出した修司は、行く先々で壊れたものに出会う。
動かなくなった荷車。濁った井戸。止まった水車。沈んだ坑道。
魔法も剣もない。あるのは、三十年以上、機械と向き合ってきた整備工の手だけ。

燃料を惜しみ、時にはバイクを押して歩きながら、修司は壊れた暮らしを一つずつ直していく。
流れ者として警戒され、職人として認められ、旅の途中で出会った少女や仲間たちと、少しずつ縁を結んでいく。

だが、旅の果てで彼が知るのは、帰還の道ではなかった。
かつて同じようにこの世界へ流れ着き、帰れないまま何かを遺した先人の工房。
そして、相棒の命がもう長くないという事実。

肩書きも家庭も失った男は、最後の一滴を何に使うのか。

これは、失った人生を取り戻す物語ではない。
帰れない世界で、残された手と相棒の命を使い、誰かの明日を直していく物語。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
アルファポリス
アルファポリス2026/06/29
  • 現在の作品最後の一滴まで