あらすじ
NBAドラフトは、世界中の化け物たちが名前を呼ばれる夜である。
一巡目の若者たちは、光の中にいる。
家族と抱き合い、帽子をかぶり、カメラの前に立つ。
だが、二巡目の下位は違う。
二巡目五十九位。
それは、栄光の順位ではない。
名前は呼ばれる。
けれど、誰も待ってはいない。
トレイ・カウフマン=レンが呼ばれた瞬間の映像を、筆者は見つけることができなかった。
皮肉なことに、その夜、彼を指名したチームには、別のスーパースターがやって来ようとしていた。
画面は、そちらを追う。
トレードの字幕が流れる。
解説者たちは、その話をする。
リーグの未来を変えるかもしれない男の名前が、画面を占める。
その陰で、五十九位の青年の名が呼ばれる。
トレイ・カウフマン=レン。
二メートルを超える身体を持つ、バスケットボール選手。
そして、哲学を学ぶ男である。
なぜ、NBAを目指す男が哲学を学ぶのか。
なぜ、画面に残らなかった男の物語を書くのか。
これは、哲学するバスケットマンが、NBAドラフト59位へたどり着くまでの物語である。
※本作は、公開情報をもとにした物語です。実在の人物・団体・出来事を題材にしていますが、会話・心理描写・場面描写の一部には、筆者による解釈と再構成を含みます。