あらすじ
「水分温度の閾値設定は、私の生体ハードウェアにおける固定定数だ。……亜理砂、冷ますためのファン《ふーふー》を実行してくれ」
応用数理研究所の特別研究員であり、世界屈指の天才プログラマー・数ノ瀬刹那。
しかし彼の頭脳は、腕の中のウサギのぬいぐるみ「オイラー」という物理的な接続(アンカー)がなければ、一行のコードすら記述できず、言葉を紡ぐこともできない致命的なバグ(生活能力ゼロ)を抱えていた。
そんな彼の「唯一の現実世界とのインターフェース」である助手、小鳥遊亜理砂の元に、ある日、完璧なデッドロック(密室殺人)の報せが届く。
現場は、外部のネットワークから物理的に隔離された無菌室型サーバーセンター。
監視カメラ、二重のハッチログ、すべてが完璧にロックされた「エアギャップ(オフライン密室)」で、総責任者の五島博士が毒殺された。
刹那の超並列脳と、亜理砂のふーふー(温度調整)が暴く、最高級スマート・コーヒーメーカーに仕込まれた「悪意ある一行のコード(バックドア)」。
天才のあまりにも愛おしいポンコツな「バグ」と、冷徹にコンパイルされる美しき「方程式」が交錯する、新感覚の理系キャラクターミステリ、開幕。