あらすじ
ここは……いや、おれは……。
気がつくと、おれは雲のように白く柔らかな地面に横たわっていた。身体はわずかに沈み込み、まるでベッドに身を預けているようで寝心地は悪くない。一瞬、このまま眠ってしまおうかと思ったほどだ。
だが、そうしている場合ではない。おれはむくりと上体を起こし、地面に触れ、次に頭上を見上げた。
そこには青空が広がっていた。その空を突き刺すように鯨の尾びれの形をした巨大な雲のアーチが悠然と弧を描いている。現実離れした光景のはずなのに、まるで遥か昔からそこに存在し続けていた自然の景観のような妙な説得力があった。
まだ頭の中には薄い靄がかかっているようだった。起きて少し時間が経ち、夢の内容を思い出そうとするみたいに記憶の輪郭がぼやけ、掴もうとしても指の間からこぼれ落ちていく。
それでも、おれはこの状況を漠然とながらも理解し始めていた。同時に胸の奥にじわじわと言いようのない重苦しさが沈殿していった。
これは夢なんかじゃない。そして、さっき起きたこともおそらく現実だ。つまり、おれは――。
「俺たち死んだみたいだな。はははっ」