あらすじ
幼い頃、わがままで暴れん坊だった景司は、日曜学校や寺社での説法をきっかけに、人としての生き方を深く考えるようになる。
「情けは人のためならず」「正直の頭に神宿る」。世の中に伝わる教えに触れる中で、景司は一つの疑問を抱く。善行によい報いを期待することは、本当の思いやりなのだろうか。
答えを求めながら成長した景司は、結婚し、娘を育て、父母を看取り、やがて祖父となる。介護の苦しみ、家族との別れ、新しい命の誕生。人生のさまざまな出来事を経験する中で、景司は何度も迷い、自分の未熟さに苦しむ。
それでも人と支え合い、受け継がれてきた優しさに触れるたび、景司は少しずつ気づいていく。思いやりとは感謝されることでも、覚えていてもらうことでもない。相手の人生を信じ、その人らしく生きられるよう願い続けることなのだと。
これは、一人の男が生涯をかけて「見返りのない優しさ」の意味を問い続ける、心温まる家族の物語である。