あらすじ
京都・寺町通から少し外れた路地に、古書店『月読堂』はある。
木の引き戸、古い本の香り、静かな坪庭。
そして、穏やかな店主・榊。
訪問介護士の紫乃は、人間関係や仕事、家族、過去の思い出に心を揺らすたび、なぜかこの店へ足を運んでしまう。
利用者の何気ない一言に傷ついた日。
大切な人を思い出して眠れない夜。
誰かとのすれ違いに胸が痛む雨の日。
そんな時、月読堂で交わされるのは、答えを押しつける会話ではない。
一冊の古書と、一杯の珈琲。
そして、静かな問いかけ。
絡まった心の糸を、少しずつほどいていく。
これは、誰かを許す物語ではない。
過去や痛みを抱えたまま、それでも少しだけ前を向いて歩き出す人々の物語。
雨上がりの京都で紡がれる、優しくて少し切ない連作短編集。