あらすじ
最果ての村には、絶対に開けてはいけない扉があった。
開けば、世界が終わる。
15歳の少女イロハは、親を失い、村の中にいながら誰の家族にもなれずに生きてきた。村人たちは外の世界を恐れ、北の森にある封印の祠へ近づくことを固く禁じている。けれどイロハは、境界杭の向こうに広がる世界を、ずっと見たいと思っていた。
ある夜、村に外の者たちが現れる。炎と悲鳴の中で逃げ場を失ったイロハは、禁じられた祠へ向かい、封印の扉の前で追い詰められる。手のひらから流れた血が封印に触れた瞬間、夜を裂く白い閃光が村を貫いた。
目覚めたのは、村が災いとして恐れ続けてきた吸血鬼クルム。
彼は村を襲った者たちを皆殺しにし、ただ一人生き残ったイロハだけを殺さなかった。理由は、彼女が自分にとって唯一の“食料”だったから。
恐怖の中で、イロハはクルムと共に村の外へ旅立つ。そこに広がっていたのは、人間の気配がほとんど消えた荒廃世界だった。崩れた建物、読めない標識、残された生活の跡、遠くに連なる灯。
人類は本当に滅んだのか。
なぜ世界は壊れたのか。
吸血鬼とは、いったい何だったのか。
世界を憎む吸血鬼と、世界に居場所を持てなかった少女。捕食者と食料として始まった二人の旅は、やがて失われた世界の真実へと近づいていく。