あらすじ
短篇小説って何なんだろう、と僕は考える。考えながら別のことを考えて、でも戻ってくる。
長篇が世界を作るとしたら短篇は何かが消える瞬間だ。終わった関係の象徴物を、捨てようとして捨てられず、ゴミ箱が見当たらなくて、そのままポケットに入れておく——そういう話だ。解決しない。謎は謎のまま残る。でも次の一歩がある。
短篇が好きなのはそこだ。感情を昇華させない。答えが出ない問いを出ないまま書き続ける誠実さ。読者は受け取るだけじゃなくて、作品を完成させる側になる。余白の共同作業、とか言うとちょっと上品すぎるけど、要するにそういうことだ。
ところで僕は「うまい文章を書こうとすること」が一番ダサいと思っている。うまく書こうとした瞬間に何かが死ぬ。整合性が高すぎる文章は嘘くさい。人間の崩壊に順序なんてないし、愛している、なんて言葉で言えるものじゃない——殴って、食べて、走って、考え違えて、また走る、その全体が愛の証明になる。
このエッセイでは、そういう短篇を紹介していく。読み終えた夜にうまく言葉にできなかった話、しばらく頭から離れなかった一文の話を、ぐるぐると。
付き合ってほしい。