あらすじ
東京。近未来。
孤独死した老人の鑑定依頼が、UDA第三鑑定室に持ち込まれる。社会的には日常の一件として処理されるはずのその案件を、鑑定官・千尋は見過ごすことができなかった。彼女が死者の記憶を再現する「リプレイ」で確認したのは、死の直前、老人が何かを必死に書き残そうとする姿だったからだ。
通常ならば「孤独死・自然死」として即日結論が下される事案。しかし現場に残されていた一冊のノートには、巨大介護企業「ケアフルライフ株式会社」に対する断片的な告発が綴られていた。同社は現在、国の「介護DX推進プロジェクト」の中核企業であり、さらにUDAの最大出資者でもある。
調査を進める中で千尋は、ある禁忌に触れる。それは「死者コンテンツ産業」。本人の同意を得ることなく、死者の最期の記憶を抽出・編集し、娯楽や情報として流通させる違法市場の存在だった。そしてその裏側には、UDA内部からのデータ流出の痕跡が浮かび上がる。
「誰かが、死者を売っている」
組織の手続きを優先しようとする同僚・九条と衝突しながらも、千尋は独自に真相へと迫っていく。しかしその過程で見えてきたのは、単なる企業不正ではなかった。むしろこの国の介護システムそのものが孕む歪みであり、孤独死した老人はその崩壊を最も深く理解した存在だった。
そして老人は、最後の15分に賭けていた。自らの死が「記録」として誰かに届き、この国の構造を暴く鍵になることを。
これは、死者が最後に仕掛けた逆襲の記録。
そして、生者がそれを受け取ってしまったことで始まる物語。