あらすじ
平凡な従者セレンは、幼馴染の天才魔術師イグニスを影から愛し、献身的に支え続けてきた。
しかし傲慢なイグニスはセレンをただの雑用係として見下し、新たな婚約者を迎えて彼を冷酷に追放してしまう。
すべてを失い王都の片隅で生きていたセレンだが、ある日イグニスが術式の暴走で「死の呪い」を受けたことを知る。
セレンは自らの命に等しい「記憶と感情」を代償に呪いを肩代わりし、心を持たない空っぽの人形となってしまった。
目を覚まし、己の愚かさとセレンの献身を知ったイグニスは凄絶な後悔に苛まれる。
失われた心は二度と戻らない。
絶望の底で狂気に堕ちたイグニスは、婚約者を切り捨て、地位も名誉もすべて投げ打ち、セレンを北の辺境にある塔へと監禁する。
「お前は私だけのものだ。永遠にこの箱庭に閉じ込めておく」
感情を失ったセレンは主人の言葉をただ機械的に受け入れ、美しい模造品の微笑みを返すだけ。
交わることのない感情。けれど決して離れることのない二人。
これは、空っぽの器と狂気の魔術師が織りなす、永遠に終わらない美しきメリーバッドエンド。
【登場人物紹介】
◇セレン・アークライト
穏やかで献身的な性格の青年。
平凡な家柄だが、他者の魔力に干渉できる特異な魔力親和性を持つ。
幼馴染のイグニスを誰よりも深く愛し、影から支え続けてきた。
のちにイグニスの呪いを肩代わりした代償として、過去の記憶とすべての感情を失い、空っぽの人形のような存在となる。
◇イグニス・ヴォルデリア
類まれなる魔力と才能を持つヴォルデリア公爵家の次期当主。
自信に満ち溢れ、他者を見下す傲慢な性格。
セレンの献身を鬱陶しいと感じて冷たい言葉で突き放すが、自身が死の淵から救われた真実を知り、心臓を素手で握り潰されるような激しい後悔に苛まれる。
すべてを失ったセレンに対し、己の全存在を懸けた狂気的な執着と独占欲を抱くようになる。
◇ルシアン・エルフォード
エルフォード伯爵家の令息。
イグニスの新たな婚約者として選ばれた、美しく華やかな青年。
家柄と外見の良さだけが取り柄であり、イグニスに対して打算的な感情しか抱いていない。
のちにイグニスの執着の対象がセレンに移ったことで、冷酷に婚約を破棄される。