あらすじ

無口で不器用な夫ローガンの手紙を、ノエラは十年、彼の名で書き続けた。書簡も詫び状も社交の文も――相手の呼吸まで先回りして整え、辺境伯家の縁を黙って保ってきた。だが夫はそれを「俺の手柄」と思い込み、口の達者な令嬢に心を移してノエラを離縁する。「手紙くらい自分で書ける」。  行き場をなくし、雨の街道で行き倒れかけたノエラを拾ったのは、寡黙な駅逓の主ギルだった。彼女が何者かも、字が書けることも知らないまま、ただ濡れて震える人を放っておけずに。  一方、ノエラを失った伯爵家では、夫の手紙が同盟を一つ、また一つと壊していく。失って初めて輪郭の見える献身と、腕を知らないまま芽生えた情。これは、自分の名前で誰かに必要とされるまでの、静かな再生の物語。

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カクヨム
カクヨム2026/06/28
  • 現在の作品夫の名で十年、手紙を書いてきた妻が出ていったら、彼は詫び状の一通すら書けなくなった