あらすじ
人の記憶を消去できる技術〈クリア〉が普及した近未来。ハラスメントや不祥事は「なかったこと」にされ、当事者すら真実を思い出せない社会が成立していた。
忘却師・漣は、失われた記憶の“痕跡”に触れる異能〈想起〉を持つ青年。ある日、元工場労働者の三田村葵が彼の元を訪れる。彼女は5年前に受けた被害の記憶を消されていたが、偶然のきっかけから「自分に何かがあった」ことだけを思い出してしまう。
漣は調査を進める中で、記憶は消えても恐怖や動悸といった“感情の残滓”が身体に残り続けることを知る。そして事件は一企業の不正ではなく、記憶を資源として管理する巨大な社会システムそのものへと繋がっていく。
やがて彼らは、消された人々の“言葉にならない痕跡”を集め、それを「証言」として世界に突きつけることになる。