あらすじ
五年前、S県の離島・N島で、一人の女性が謎の死を遂げた。
女性は、女人禁制の奇祭・陽根祭《ひのねまつり》を密かに見物しようとしていた外部の人間だった。
発見された遺体に大きな損傷はなく、ただ衣服だけがすべて失われていた。
死の直前、彼女がSNSに残した投稿は、たった一文。
「か み さ ま の こ え」
事故として処理されたその事件は、オカルト界隈で“かみさまのこえ事件”と呼ばれるようになる。
そして現在。
オカルト系Webメディア『週刊怪奇ファイル』の記者Rこと三崎涼《みさきりょう》は、五年ぶりに開催される陽根祭を取材するため、男装してN島へ渡ることになる。
巨大な御神体を担ぐ、下ネタじみた珍祭。
そう聞かされていたはずだった。
だが島に着いた涼は、ある異変に気づく。
祭り前日だというのに、村には若い女の姿がどこにもない。
陽根祭の本当の名は、御鳴祭《みなりまつり》。
音無村に、かみさまのこえが鳴る夜。
御聲《みこえ》さまは、姿ではなく声で女を呼ぶ。
名を呼ばれた女は、あちら側へ連れていかれる。
逃げなければならない。
そう思っていたはずなのに、嵐の夜、涼は海の上を歩いて現れた美しい神様――水鳴津彦《みなつひこ》に名前を呼ばれてしまう。
女を喰らう神様に見初められた女記者の、因習村ホラー×神婚譚。